はるのぶのつれづれ

幼女の子宮で泳いでいた頃の記憶

卒塔婆詩(そとばぽえむ) 第6回

子宮の破裂する瞬間
立ち会い人がこちらを見つめて笑っている
今から驚くよとばかりに期待しているから
急いで表情を固くした
全てはスロービデオのように
割れた子宮が散らばってゆく

移植した花たちがうまく咲いてくれないから
蔵に閉じこめてしばらく様子を見ている
本当の恥ずかしがりやさんなら
暗くしたほうがよく咲いてくれるだろうし
そこで枯れてしまうなら
その程度の楽しみでしかないから

宇宙があるでしょ
精神があるでしょ
その両端をくっ付けて
没落しない人間が浮かびますか

豪雪吹きすさぶ高山さえ踏破されざるはなく
星光なき宇宙さえやがて最遠に届く
人の精神は脳の類型化により尽くされよう
ただ最後の秘境として他人の存在が残される
いかなる者も名探検家としてしか生きられない頃
他という人間は丁度よく遠い
個人は大きな人間帯に置き換えられ
少ない人間で動く社会の原基となろう

未来は存外寂しくって
大通りという言葉が死語になっている
ちょうど人の多さが苦痛なんで
その寂しさに少しは憧れる
寂しさは人が多いほど深刻でどこかに
人のいる予感はそれだけで励みになるから

探し物を見つけた老人が子供に問いかける
お買い物はいつですか

二十日ぶりに燃えた地面が
北九州の怨嗟を呼んで止まない

米粒の一つ一つが入るべき口を知らずに
廃棄されたおにぎりの塊

死者たちが使い回して来た七輪を
私の順番で不意に割った
本当は態と
いや
うっかり
でも
何時か割れることを望んでいた
自殺用の七輪

孤独でも生きるという約束の相手も居ないから
孤独なんだと改めて思う
今は人の居る予感だけで満足だ

自殺するな
孤独になれ
孤立しろ
一人で死ね
一人で何が恥ずかしい
生きて自然の一部として
最後の自然として歩く人間の一人として
それだけで生きる甲斐がある
お前を殺そうとする者に構うな
付加価値に取り付かれた哀れな奴に
お前の自然は何時までも映らないから