はるのぶのつれづれ

幼女の子宮で泳いでいた頃の記憶

(メモ)韓国ドラマ「王と妃」より(2012年10月14日)

今回も韓国ドラマ「王と妃」より。内官キム・チョソンの命を懸けた注進の場面。名シーンである。

「王と妃」第185話より

(真夜中の宮殿。内官キム・チョソンの部屋。彼は荷物を纏め物思いに耽っている。)
チョソン、外に出る。内官キム・ジャウォン登場。)

キム・ジャウォン:キム内官様。
チョソン:ジャウォンか。
ジャウォン:はい、キム内官様。
チョソン:そなたが宮殿にやって来た時、よい印象を持った。きっと大物になるとな。
(はにかむジャウォン。)
チョソン:私の勘は正しかった。そなたは今や大殿の内官ではないか。ジャウォン。
ジャウォン:はい、キム内官様。
チョソン:私の愛用品が部屋にたくさん置いてある。そなたにやろう。大事に使いなさい。
チョソン、屋敷を去ろうとしている。)
ジャウォン:キム内官様。
チョソン、立ち止まる。)
ジャウォン:なぜ愛用品を私に下さるのですか。
チョソン、振り返り微笑む。ジャウォンはやや戸惑った顔をしている。)
チョソン、思いに沈んだ顔で大殿に向かう。)
(ジャウォン、チョソンの部屋で彼の荷物を前に涙ぐむ。)
(大殿では朝鮮王燕山君と側室チャン・ノクスが酒を飲んでいる。チョソンが部屋の前に来る。)
女官:殿下。キム内官が参りました。
(燕山君は杯を手に酔っている。)
女官:殿下。
チョソン:殿下。私、キム・チョソン、辞職のご挨拶に参りました。
燕山君:今、何と言っていた。
チャン・ノクス:キム・チョソンが殿下に辞職の挨拶をしに来たと。
燕山君:辞職の挨拶?
チョソン:殿下。
燕山君:老いた内官が辞職するだと?勝手に辞めると言い出しどこへ行く気なのだ。
チョソン:(跪いて)殿下。それでは失礼ながら、ここでご挨拶をさせていただきます。どうかお体を大切に。殿下のご健康をお祈りします。
(燕山君、自ら戸を開きチョソンの前に立つ。)
燕山君:辞職の挨拶とやらを聞かせろ。
チョソン:殿下。
(燕山君は座に戻り、チョソンを招く。チョソンは戸の前に立つ。)
燕山君:言ってみよ。
チョソンはチャン・ノクスの顔を見、言い辛そうな顔をする。ノクス、場を外そうとする。)
燕山君:席を外さんでよい。
(ノクスが座り直す。)
燕山君:老いたが辞職とはな。私も胸が痛む。酒を注いでやれ。
ノクス:はい、殿下。
燕山君:別れの杯を交わしたい。幼い私をおぶってくれたな。
チョソン:殿下。
燕山君:忘れられるものか。キム内官は私にとって父親のような存在だ。飲め。
チョソン、跪く。)
チョソン:私のような者に別れの杯を授けていただき、ありがたき幸せでございます。
燕山君:幸せだと言う男が、夜中に辞職の挨拶とは何だ。
チョソン、杯を戴いた格好で動かない。)
燕山君:さあ、早く言え。そなたが挨拶をしたら、私は詩を詠んでやろう。
チョソンは同じ姿勢のまま涙ぐんでいる。)
燕山君:早く挨拶せぬか。これでは詩が詠めん。
チョソン、杯を床に置く。)
チョソン:殿下。チャン・ノクスとイム・サホンを処刑し、どうか善政を施してくださいませ。
(燕山君、顔色を変えチョソンを凝視している。)
チョソン:これ以上、暴虐な政治はおやめください。
燕山君:暴虐な政治だと?
チョソン:左様でございます、殿下。
(燕山君の顔に怒りが滲み出ている。呼吸が少し荒くなった。)
チョソン:殿下は王座に就かれたのちに、官僚の弾圧を二度も行いました。戌午士禍の時、どれほど多くの学者が死んだか。甲子士禍の時もそうでございます。殿下が誅殺なさったチョン貴人とオム貴人は、大罪を犯したとはいえ成宗の子を産んだ方々です。つまり、殿下は母君を罰したことになるのです。
燕山君:(怒声で)母上が死んだのはあの女どものせいではないか。母上の無念を晴らして何が悪いのだ。
チョソン:殿下。
燕山君:聞きたくない。そなたを殺したくないのだ。
チョソン:殿下。宮殿の内外が殿下への恐怖心で覆われています。このような君主ではいけません。臣下も民も恐怖におびえ、ただ黙って従うのみ。それでは生きていると言えません。いずれ殿下がその報いを受けることになります。
燕山君:皆が私の死を望んでいるではないか。廃妃の息子だと軽蔑しているのであろう。晋城が王だったらそんな態度は取らぬはずだ。
チョソン:殿下。どうか善政を施してください。寛容の精神で国を治めれば、きっと民も殿下に寛容な心を示すでしょう。
燕山君:上に立つ者こそが寛容な心を示せる。無力で卑しい民が偉そうに“寛容な心”だと?
チョソン:殿下を信頼し従うことが民の示す寛容なのです。
燕山君:この私に説教をする気か。
チョソン:殿下。民を恐れる心を持つべきです。そうしてこそ、殿下は聖君になれるのです。
燕山君:(戸外に)誰かおらぬか。
チョソン:殿下。
燕山君:(耳を塞ぎ)この老いぼれをつまみ出せ。
チョソン:殿下。国の事をお考えください。
燕山君:そいつをつまみ出せ。早くせぬか。
チョソン:殿下。殿下。
チョソン、両脇を内官に抱えられ大殿から追い出される。)
(場面は大殿の外。)
チョソン:何をする。放さぬか。無礼者め。
チョソン、引きずられてジャウォンの脇を通り過ぎる。)
ジャウォン:もう放せ。
燕山君:(大声で)ジャウォン。
ジャウォン:(大殿に顔を向け)はい、殿下。
(ジャウォン、戸惑いながらチョソンを振り返る。)
チョソンは大殿を振り返る。ジャウォンはそわそわしている。)
燕山君:ジャウォン。
(ジャウォンは戸惑ったままチョソンを振り切り、大殿に上がる。)
ジャウォン:お呼びでしょうか。
燕山君:酒をもっと持ってこい。
ジャウォン:殿下。
燕山君:老いぼれの耳障りな説教の次はお前まで私を侮辱するのか。
(ジャウォンはまごついている。)
チョソン:(外から)殿下。
燕山君:この声は何だ。
(場面は大殿の外。)
チョソン:(跪いて)成宗は王妃様を廃し毒を下したことを、悔やみ続けておられました。
(大殿。燕山君のアップ。)
燕山君:あの老いぼれめ。
(場面は大殿の外。)
チョソン:殿下は万民の父であられます。殿下は廃妃ユン氏の息子である前に、この国の君主なのです。殿下。
(大殿。燕山君のアップ。怒りの表情。)
燕山君:母上のことを“廃妃”と呼んだな。
チョソン:(外から)殿下が母君を思う気持ちは誤りではありませんが、そのせいで多くの血が流れました。
(燕山君は立ち上がり弓を取る。ジャウォンが慌てている。)
ジャウォン:殿下。
(燕山君、大殿を出、段上からチョソンを見下ろす。)
チョソン:殿下は、少なくとも五つの罪を犯しました。一つ目、成宗の遺命に背いたこと。二つ目、お祖母様を苦しめたこと。三つ目、身内を処刑したこと。(燕山君、矢を手にする。目が錯乱している。)四つ目、外命婦の女性たちを凌辱したこと。五つ目は・・・
(燕山君は弓を放つ。チョソンの胸に命中。チョソンは顔を上げ、苦しそうに注進を続ける。)
チョソン:民の家と土地を奪い、狩猟地にしたことです。殿下。民の心は天の心です。民の心が離れたら、王座を守ることはできないのです。殿下。
燕山君:この無礼者め。
(燕山君、再び弓を引き命中。チョソンは苦しみに悶える。)
燕山君:これでも説教を続けるか。
チョソン:(息絶えながら)殿下。年老いた私にはもう欲などありません。私はただ、殿下が・・・
(燕山君、また弓を引く。命中。ジャウォン、顔を背ける。)
チョソン:殿下。私はただ、殿下が王座を追われるのではないかと心配なのでこざいます。殿下。
燕山君:あやつの舌を切って黙らせろ。
チョソン:殿下は私の直言はこうして恐れるのに、なぜ民の不満の声は恐れないのでしょうか。殿下。
燕山君:この無礼者め。
(燕山君、弓を捨て護衛の刀を抜きチョソンの前に立つ。チョソン、口を震わせ燕山君を見上げる。燕山君、一振りにチョソンを斬る。)
(大殿。放心した燕山君を笑うノクス。燕山君は涙を流す。)
ジャウォン:葬って差し上げろ。そっと運べ。
チョソンの遺骸が運ばれる。ジャウォン、寂しそうに見つめている。)
ジャウォン:キム内官様。
(終わり)