はるのぶのつれづれ

幼女の子宮で泳いでいた頃の記憶

いま、「図書準備室」(田中慎弥作)をゆっくりと読んでいる。

 十二年間ひきこもり続けて三十歳をニートとして迎えた男が、働かない理由を五十ページにわたって語り続けている。
 どこまでが(話の中でも)虚構で、どこまでが事実なのか、その境界線を確かめることさえも忘れてしまいそうになるほどに延々と語り続ける男。
 まだ途中までしか読んでいないが、あえて冗漫に話す男の言葉の中の、痛いほどに分かりすぎる、おそらくは真実の部分が、意味として胸に突き刺さりさえする。
 この本が心の片隅に沈殿しているニートも、探せば居るのかもしれない。働こうと思っているのに働かない環境に心地よさを感じているニートにとっては、この本は毒かもしれない。働かない理由を語ることが一つの芸となっているのだから。
 この話は実話をモチーフにしている。作者自身が徹底したニート(この場合は働くことを拒否する人間。たとえ親不孝を感じながらも。)であった。ニートとして生きる時間の中で生み出された先駆的な作品として本書を位置付けることも可能であろうが、読む終わるまでは即断を避けたい。
(彼はこの作品で芥川賞にノミネートされた。先日は最新作で三島由紀夫賞川端康成文学賞のダブル受賞を果たしている。)