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かびたランドセル背負い(しょい)学校に行くと
怪訝な顔して見つめてくる大人たち
子供の心をとうに忘れたような声で
私を不審者と呼んだ
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聞いていないから知らずにいることができる
自殺
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愛する人に見られた浮気の手紙
笑わなくても泣いていないことは分かる
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幼い頃の私のようにいつも
生まれざる息子のように軽く
小さな顔の小さな体の子供がひとり
私の手のひらに立っている
父にも男にもなれない私の小僧は
手を閉じてもまた浮かび上がり
子供だから子供を手放さない
逆行した年輪の堆積
小僧よお前は三十になった
父になる気はないか
男になる気はないか
せめて最後の願いとして
家を出て一人にならないか
小僧は今日も私の手のひらに立っている
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母は私を捜さない
目の前にいる私を捜さない
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気配はするのに音はしない
静かな人になりたい
音を立てなくてもここにいる
気配の人になりたい
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真っ黒になるまで終わらない雑巾がけ
白いままの布はとうに綻びている
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向うから人がやってくる
こっちからもやってくる
あちらは筆箱がやってくる
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何もしないで泣いたら思うつぼだ
自分のせいにして死んだら喜ばれるだけだ
自分の命も生活も知らず知らず握られているようで
ようやく誰の仕業と考えるようになった
一人ひとりの態度に表れた命の軽視
その最も大きな者が必ずいる
(そう思わないと戦えない)
人を殺すのにナイフは要らないとはよく言ったものだ
隣人として必ず敵をとる
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四月の朝はなめらかな雨に煙る
桜の風に吹かれて散れば名残
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朝を恐れるから朝を知らない
今日も誰かが仕事を見つけた
今日も誰かが彼女を見つけた
知らない人に朝が始まる