はるのぶのつれづれ

幼女の子宮で泳いでいた頃の記憶

ひとりごとならべ(2014年9月27日)

「深刻な語彙不足に陥っている。」
「思想的原点としての朝鮮」
「プロレタリアごっこ
「スライスされた幼女の肉」
「白骨化したキミを山で拾った。」
「肉眼の光が好きだ。」
「幼女による救済」
「幼女企画」
「差別の楽園」
「今週の猟奇殺人」
「株式会社幼女開発」
「喪の記憶を引きずっている。」
「私は母親に囚われていたのだ。」
「可愛い母を持つことは男の悲劇だ。」
若い女を追いかけるのは過去を取り返したいからだ。」
「私は母の胎内で生きてきた。それゆえ外敵から身を守る術を知らずにいた。」
「今度は自分より優秀なフリーターに悩まされかねない立場だ。」
「そして正社員より優秀であることを見せつけなければならない立場だ。」
「36歳でも就職には間に合った。今はバイトだが、二三年をメドに社員にしてくれることになっている。」
「学歴と簿記の資格が役に立った。前職の事務バイトで登記簿に慣れていることも採用の決め手になった。」
「処女以外の人と幸せになれる自信がない。今更胎内には戻れないが、やはりそう思う。」
「私は過去の埋め合わせをしようとしているだけだろう。」
「母の胎内に祖国はなかった。私には日本が見えない。」
「あるいは胎内こそが祖国なのかも知れない。永遠に辿り着けない日本というものにではなく、より土着の、それゆえ普遍的な空間に私は祖国を求めようとしている。」
ソ連のない世界を生きるのは怖い。」
「そしてその関係性から誰が排除されているのかを考えなければならない。」
「母親に処女喪失の有無を聞けないでいる。胎児は母親の処女喪失によって見者としての特権を剥奪されるからだ。それゆえ母親の処女喪失は、私の非凡さを剥奪することになる。そのことを確かめるのが辛いのだ。」
ドラえもんが何とかしてくれると思ったのか?」
「処女の膣内に棲む胎児こそ真実をかぎ分ける見者だ。」
ニートは僕より働かないといけない。」
「いじめとドメスティック・バイオレンス治外法権。学校を可視化しろ。」
天皇を日王(日本王)と言い換えること自体が歴史の捏造である。」
「特亜の時代は終わった。ネット右翼にいささかでもラディカル性があるとすれば、彼らの逆説的な視野の広さだ。彼らのほうが、寧ろアジアを広く捉えている。」
「人間の醜さや傲慢さが反権力に集中的に表現されているのは皮肉な話だ。」
「優れた文学作品には三重性(大筋と世界観。そして感性・表現力)がある。そこを意識すれば作品にすっと入り込める。」
「二度読みではなく、三度読み出来る作品に価値はある。」
「趣味は国語辞典を読むことだ。新潮国語辞典を読んでいる。14万項目を覚えるのは大変だが、項目どうしが共鳴し合う瞬間を味わうのが堪らなく嬉しいのだ。」
「形がしっかりしていないと、内実にまで踏み込むのは相当に難しい。」
「母親の処女性を気にしているうちは私もまだ喪男のままだ。」
「ありえないものを追いかける。」
「なぜ彼女に告白出来なかったかって?母親に入れる訳にはいかないだろ。重ねてしまうのだ。」
「ひょっとしてセックスを面倒臭いと思ってないか、俺?」
「二十八歳の非処女に手紙を書くことは、処女主義者にとつて一種の屈辱であつた。」
「本当に処女が欲しいのか、喪の記憶を無くしたいのか、自分では分からない。」
「材料。西本願寺東本願寺ベルリンの壁。」
「どういう機械装置なのかという、『どういう』の部分が種差なのだ。」
「アホを裁くのと同じ遣り方で始末する。」
「この歳になって、ニート・フリーター時代の遅れを取り戻そうとしている。」
「数字に強いという持ち味を鍛えなければならない。」
「来年には私より優秀な奴が来るかも知れないという危機感。」
「とっくに振られたのに、彼女の心変わりを待っている。」
「時間が必要なのは分かっている。」
「今だ母性のディストピアに生きているのだ。」
「失った時間を取り戻したくて仕方がない。」
「後悔しても知らん。今度は君が泣く番だ。」
「女子高生のオナニーを覗き見る父親。」
「恋愛話で騒ぐ俗物に嫌気が差している。」
「私自らの行動が敵に隙を与えているのだ。」
「人の使い方を学ばなければ、敵の攻撃を許すことになるだろう。」
「10年も経ったら、神戸の幼女殺しに死刑が執行されているだろう。その頃は私が当時の犯人と近い歳になっている。やはりロリコンのままだろうか。」
ロリコンだからこそ守るべきルールがある。それを破ったのだ。(犯人であるなら)奴には死刑が相当だ。」
「敵の隙を見つけろ。もはや道化を止めろ。道化は敵に隙を与える。」
「明日からまた戦いが始まる。不安は大きい。しかし最後は私が勝利するだろう。」
「漫画が下手だと言われている時点で、彼は漫画家として勝っている。」
「私は、捧げられずに生きてきた。」
「胎児とは、喪男を指すのか。」
「本当は引きこもりたいのです。」

ひとりごとならべ(2014年5月1日)

「来歴のない死体」
「何を書いても言葉が上滑りする。」
「生きながらパピルス紙に閉じ込められた少女」
「人に読んでもらおうと思って書いたら詩にならない。しかし詩は人に向けて書くものであり、そこが逆説的だ。」
「今のニースズスレはまゆ兄が自殺するのをみんなで待っているような気がして不気味だ。」
「もちろん他人に自殺を勧めたのは奴であり、仮に奴が自殺しても自分の言葉が跳ね返ったという点で自業自得に他ならないが、それでもスレの住人はとどめを刺しすぎだと思う。無職童貞にあの悪罵はないだろう。」
「3月9日。ニースズスレのウォッチをいったん止めにする。まゆ兄が地下に潜伏したからだ。最近はニースズ本人よりも、メイン・アンチである彼のほうに注目していたが、彼はニースズに告訴を示唆されて以来ネット活動を控えるようになっていた。いい傾向だ。」
「まゆ兄が訴えられるのは当然のことだ。じつは告訴の示唆は六年前にもあった。私自身は当時、提訴に反対の立場を取ったが、すでにお互いが変わってしまった。」
ニースズには以前のようなカリスマ性がなくなった。普通の高齢フリーターになったわけだ。以前は裁判によって彼のカリスマ性に傷が付くことを恐れなければならなかったが、現在ではその心配もない。」
「昔の彼には社会への牙があった。だが彼自身はニートの代弁者にはなりたくなかったのだ。」
ニースズは他人へのサービスを極端に嫌うところがある。それゆえに漫画や動画が発展途上に終わった。何かを形にするところまではやるが、思いを上手く伝えようとすることを生理的に嫌っているようだ。それが端的に表れたのがバレンタインの憂鬱さんに対する彼の批判だった。」
ニート時代のニースズは論理が破綻していたと言う人もいる。しかし、言いたいことはバンバン伝わってきた。言葉に気持ちが籠もっているから、上手いフレーズに乗った時は傑作だった。フリーターになってからのスズキは静かすぎる。従順と言っていい。」
「残念と言うべきか、彼は今の立場に安住してしまっている。かつてのような社畜に対する牙は失われてしまった。カリスマ性があるとしても、日記タグの草分けとしての栄光のなかに見いだすしかない。彼の名前はニコニコ動画の歴史に刻まれている。そこは確かだ。」
「小田島はどうだ。彼は最初の訴訟騒ぎの反省を忘れ、中傷行為をエスカレートさせた。しかも氏ムシメさんの自殺をニースズのせいにした。あれで一線を越えたと思う。人の不幸を利用する行為に対しては正当な報いが必要だ。まゆ兄はそろそろ痛い目に遭うべきだろう。」
「まゆ兄のレスにはセンスの光るものもあった。『俺は生きる目標を探すために生きている。』『誰にも嫌われている俺。友達もいないし彼女もいない。しかし、明日も勝つ。』等々。意外とすんなり入ってくるのだ。」
「話はがらっと変わる。小田島が宅建を受けるそうだ。全くの偶然だが、私も受けるつもりだ。」
ニートの社会復帰を妨げているのは終身雇用制度だ。」
「まずは短答式の問題で結論だけを先に覚えておく。そして解答に至るプロセスを論理的に考えることで論文式の勉強にもなる。」
「小田島がツイッターから逃げた。いいことだ。二度と馬鹿な挑発を見なくて済むし、スレの住人も彼を追い詰めることがなくなるのだから。」
「できるようになりたい。」
「翼はいっぱいあるのに翔べないのは何故だ。」
「この十年は何だったのかふと思うことがある。」
「わたくしはわたくしに与えられた祝福を自らの力で実現しなければならない。」
「“癒し系暴力団”という言葉を思いついた瞬間、もう使われているだろうと思った。検索したら案の定だった。」
「食費。三人家族。週に一万。米代は別。」
「『遠藤、勝てないもどかしさについて、“今は我慢です”と話していました。』(NHKスポプラ14年3月12日放送分より)」
「『赤い部屋に閉じ込められる』と書いても恐怖感を与えはしないだろう。本当に怖ければ、自分の赤さにさえ気づかないからだ。」
「言葉の密度が欲しい。」
「現代史に埋もれた一体の遺体である私」
「人間である以上、私は死ぬことが出来ない。」
「2月27日。現在の雇用先から来年度の更新がない旨を告げられる。要は雇い止めだ。」
「3月28日。就活一社目で次の会社が決まる。運がいい。この歳でよく採用されたもんだ。とは言え、就職活動はある意味でまだ続いている。正社員にしてくれる予定だが、逆に言えばなれないかも知れないということだ。だからその分岐点までに十分な経験を積んでおきたいし(さらば雑用係!)、そもそも会社に居続けるためのアクションを取り続けなければならないのだ。」
「思い出ではなくまだ生々しい現代史である。」
「奇麗な女を探したほうが早くないか?」

当ブログ一行紹介集(2012年より)

・2012年3月12日
部屋がないから風呂で抜いてる。
・2012年3月31日
34歳“未使用”フリーター。
・2012年4月13日
日給6400円の事務バイト。
・2012年5月6日
『34歳使い捨て派遣貧乏人』の異名をとる。
・2012年5月18日
ようやく日商に本腰をあげる。“永遠の童貞”大手拓次は人生の師匠。
・2012年5月22日
仕事後は『定本大手拓次研究』を読んでいる。
・2012年8月29日
仕掛けられた死にどう抗えばいい。純情テロル。
・2012年10月13日
私は独男だったらしい。
・2013年1月27日
ここはひとり派遣村湯浅誠氏を村長と仰ぐ。
・2013年3月3日
上を見れば腹が立つ。下を見たら引きずり込まれる。されど横を見て生きれば希望がない。ならば腹が立っても上を見て生きるしかない。
・2013年3月17日
弱者の物語を克服して生き残るしかない。
・25年10月17日
『わたしも読んだことがありますが、精神に異常を来したりしておりません。』(ヤフー知恵袋ドグラマグラという・・・』より)
・2013年11月23日
設定上は株式会社早乙女アートヴィレッジ代表取締役社長の肩書きをもつ
・2014年1月12日
自称イノベーションクリエイター
・2014年6月14日
ヤング・モダニスト
・2014年10月5日
又の名を「ののほえむ」
・2016年9月25日
地元中小企業の経理担当
・2018年2月4日
監査準備で馬鹿忙しい
・2021年8月29日
ニートスズキのアンチもシンパも中年だった
・2023年10月16日
会社の新人25歳の親が私と同い歳だった46歳毒男
・2024年2月14日
幼女にちんこを入れたいと口走ってしまう社会不適合者
・2024年2月25日
つれづれとは、思考実験だったのだと最近は思う
・2024年2月26日
童貞の森のおとうさん
・2024年3月26日
ウミガメは空に哭く
・2024年4月9日
幼女の子宮で泳いでいた頃の記憶

(引用メモ)韓国ドラマ「王と妃」より(2014年3月23日)

「『王と妃』四巡目。癸酉靖難。」
「王と妃」第31話より
(首陽邸。屈強な男たちが集まっている。彼らは力比べのために来たが、首陽大君の口から本当の目的が告げられる。)
ホン・ユンソン:首陽大君様です。
首陽大君:立たなくてよい。酒席に堅苦しい礼儀は無用だ。
(一同は首陽大君の発言に注目している。首陽大君が一瞥する。ヤン・ジョンとユ・スが首陽の両脇に立ち、刀を抜く。一瞬にして場の雰囲気が緊迫する。立ち上がる一同。)
首陽大君:私は今日、ふらちな盗賊を一掃しこの国を立て直す。現在、奸臣キム・ジョンソらは独断で政治を行い、民と兵のことを顧みず人々の恨みを買っている。その上あの者たちは王室を軽んじ、密かに安平大君と手を組んでよからぬ事を企んでいる。ゆえに私が打倒を決意した。今こそ忠臣が大義のために立ち上がるべきだ。
(一同に動揺が広がり、騒然とした雰囲気に。)
クァク・ヨンソン:このことは殿下もご存知ですか。
首陽大君:お知らせした。これは王室と殿下の意向だ。
クァク・ヨンソン:ならば王命書があるはず。まずは王命書を見せてください。
首陽大君:敵に見られる危険があり、文書ではもらわなかった。
(再び動揺する場。)
首陽大君:私を信じられぬのか。私は先王の嬪宮に行き、反逆の徒を斬り捨てると誓った。もし成功しなければこの命を捨てるつもりだ。私に従う者は従え。私を疑う者はこのまま家から出ていけ。殺したりはせぬ。来た時と同じように歩いて出ていけばよい。
(一同の動揺は治まらない。ハン・ミョンフェは辺りを見回している。大君退場。騒然とする首陽邸。)
ホン・ユンソン:何人か痛めつけて、従わせますか。
ハン・ミョンフェ:彼らも生死の瀬戸際だ。殴っても従わん。
ナレーション:首陽大君の家に集まった者たちは、挙兵について知らされていなかった。多分に場当たり的な行為だった。安平大君が10月15日に首陽大君を殺し、王を廃する計画だったという「朝鮮王朝実録」の記録を全面的には信用できない。だが、安平大君が平安道の武器を武渓精舎に隠し、兵を動員しようとしたのは事実である。そのため首陽大君は急いで事を企てた。その結果、無謀で混乱を極めた挙兵になったのである。
「王と妃」第31話より
クォン・ラム:クァク副司はなぜ帰らぬのだ。
クァク・ヨンソン:首陽大君なら私の能力を認めてくれるはず。私は首陽大君のため死ぬ覚悟を決めました。
クォン・ラム:ありがとう。残った者は豪傑ばかり。大君様も百人力だ。
「王と妃」第31話より
イム・ウン:大君様。奥様がいらっしゃいました。
首陽大君:通しなさい。
(夫人ユン氏登場)
首陽大君:私は・・・
ユン氏:これ以上ためらわないでください。
(首陽大君は家族の運命を不安視している。)
ユン氏:持ってきて。
(イム・ウンが鎧一式を運んでくる。)
ユン氏:私たちは皆、死を覚悟しました。ためらわずに挙兵なさるべきです。
(首陽大君は妻の顔を見つめた。)
「王と妃」第31話より
(妻に見送られる首陽大君。屋敷の前に部下が整列している。檄を飛ばす首陽。)
『私のこの一身に、国の存亡がかかっている。死ぬも生きるも天の定めだ。男ならば国のために死ぬべきだ。従う者は従い、去る者は去れ。私は奸賊を斬り捨ててみせる。誰にも私は阻めぬ。
(屋敷を後にする一同。大君は妻を振り返る。妻の目に涙が光る。)
「王と妃」第31話より ハン・ミョンフェ
『大君様は従者と二人きりでお出かけになった。ヤン・ジョン、ホン・ユンソン、ユ・スは大君様を追っていき万一に備えろ。』
(第一隊出発)
『クァク・ヨンソン、クォン・オン、クォン・ギョンは敦義門の内側に潜伏しキム・ジョンソの残党を場内に入れるな。』
(第二隊出発)
『残りの者は私についてこい。大君様はキムを斬った後、そのことを殿下に告げに行かれる。それから奸賊を呼び出し順番に処刑する。』
「王と妃」第31話より
(キム・ジョンソ邸。キムは愛妾に酒を注がせる。キムの家僕が急いだ様子で来る。)
家僕:大監様。首陽大君がこちらに来ます。
(キム・ジョンソは杯を眺めている。)
家僕:どうしましょうか。
(キムは黙ったまま。)
家僕:いつ殺しますか。
キム:供の者は何人くらいだ。
家僕:家僕が一人です。
(キムは驚いた様子で振り返る。)
家僕:どうしましょうか。
キム:ならば迎えろ。
家僕:はい。
(キム・ジョンソ邸は首陽大君の訪問で騒然としている。門前で待つ首陽。家僕達は彼を取り囲むように立っている。皆手に持った武器を隠そうともしなかった。)
「王と妃」第32話より
(真夜中のキム・ジョンソ邸。キムは屋敷の外に出ている。首陽大君と彼の執事イム・ウンもいる。声がする。)
家僕:大監様。
(声の主が走ってくる。)
家僕:大監様。
(息切れた声で)
家僕:大監様。
キム:何事だ。
家僕:殿下の使いが王命を伝えに。
キム:王命だと?
家僕:はい、大監様。宮殿の様子が変なので来るようにと。
首陽:これは大変なことになった。
キム:事情をご説明ください。
首陽:実は謀反が起きたのです。
キム:謀反ですと?
首陽:ご存知なかったのですか?安平大君の仕業です。
キム:何を根拠にそう言うのです。
首陽:安平大君の部下が私に手紙を寄越したのです。お読みに。(手紙を差し出す。)謀反の内容が詳細に綴られています。実はこの件で殿下にお話がしたいのです。
(キム・ジョンソは手紙を受け取る。)
首陽:(家僕に)外にいる使いに伝えよ。すぐに左議政殿と向かうと。
(家僕は戸惑っている。)
首陽:早く伝えぬか。
(家僕は主人の顔を見る。キムが頷く。家僕はおじきして場を離れる。手紙を開くキム。イム・ウンが隙を窺う。)
(首陽が目でイムをけしかける。キムが振り返り、イムは顔を背ける。キムは月の明かりで手紙を読む。この時、背中に隙が生まれる。)
(機を捉えたイム。一気呵成に鉄球をキムの頭上に振り下ろす。キムは目を見開いて立ち尽くす。首陽大君は泰然と構えている。イムがもうひと振りする。キムが倒れる。)
「王と妃」第32話より
首陽:チェ承旨。急を要する問題なのだ。官僚たちが安平大君とともに謀反を企てている。まずはキム・ジョンソ父子を殺した。事前に知らせる余裕がなかったが、残党の始末に関して承諾を得たい。殿下にそう伝えてくれ。
(チェは驚いている。)
首陽:きっと殿下は驚かれることだろう。ゆっくり静かな声でお伝えせよ。その後私から詳しくお話しする。
チェ:殿下はもうご就寝中で・・・
ホン・ユンソン:無礼者。残党征伐を買って出た大君を、追い返す気か?(チェの首筋に刀を突き付けて)反逆者の仲間でないならすぐに取り次げ。さもなくばそなたを斬ってやる。
チェ:内官が先へ通さないので・・・
ホン:黙れ。
(首陽大君が制止する。)
首陽:もう一度取り次げ。
(チェは戸惑っている。)
首陽:一刻を争うのだ。
チェ:承知しました。大君様。
(チェは戻る。)
ホン:強行突破すべきです。このホン・ユンソンが先頭に。なぜためらうのです。
首陽:殿下の許可なしには入らん。
「王と妃」第32話より
ハン・ミョンフェ:大君様が殿下の許可を得る間に、官僚たちを宮殿に呼び集めるのだ。領議政と兵曹判書については使いの者に連れてこさせる。ヤン・ジョンは武渓精舎へ行き安平大君を確保し、次の命令を待て。
ヤン:分かりました。
ハン:ユ・スは顕陵の碑石所へ行き、ミン・シンを護送してこい。相手が逃走する動きを見せたら、その場で殺してよい。
(ユ・スは頷く。)
ハン:ホン・ダルソンは官軍を動員してこの屋敷を幾重にも囲み、厳重に警備せよ。官僚たちが殿下に謁見を求めてきたら、従者らは始末し一人で中へ通すように。
ホン:分かった。
「王と妃」第32話より
首陽:殿下。
端宗:謀反ですか。
首陽:官僚たちが安平大君と結託しました。殿下が幼いのを甘く見て仲間を集め、国の存続を脅かそうとしており、非常に危険な状況です。急を要することだったため、独断で左議政を殺しましたが、他にも仲間が。彼らもただちに始末します。どうか許可を。
オム・ジャチ:首陽大君の主張に少しも間違いはありません。
端宗:首陽大君は聞け。安平大君の件は知っている。そなたに相談したいと思っていたが、キム・ジョンソの監視が厳しく叶わなかった。
首陽:ご信頼いただき光栄です。
端宗:彼らを追及したいが、私は詳しい内情を知らぬ。そなたに全権を委ねるので、反逆者どもを取り押さえ国を守ってほしい。
首陽:仰せの通りにいたします。迷いなどありません。殿下のご意志に従い国を守ります。
「王と妃」第33話より
端宗:安平叔父上は?
(首陽は端宗の言葉を待っている。)
端宗:どうなさるつもりですか。
首陽:愚かにも安平はファンボとキムの誘惑に負けたのです。
(端宗は緊張した表情である。)
首陽:安平と私は先王様の弟でございます。殿下を補佐する責務があるにも関わらず、不忠を働きました。
端宗:ということは。
首陽:死罪に処すべきところですが、それは先王様も望まれぬはず。ひとまず安平を江華に護送いたします。
端宗:それでいいのです。王族同士が殺し合えば民心が離れます。
(首陽大君は意表を突かれたような顔をする。)
端宗:太宗が兄弟を殺したのは建国当初のこと。中国の王朝もかつては骨肉の争いをしましたが、今は時代が違います。
(ほくそ笑むオム・ジャチ)
首陽:察してくださり誠に感謝いたします。
端宗:謀反を企てた者を一人残らず洗い出し、厳しく罪を問うてください。その者たちを断罪してこそ王室の威厳が保てます。
(首陽大君は端宗の威容に驚いている。)
端宗:だが無実の者を罰してはなりません。罪なき者を罰すれば民たちは、王室や私を恨むはず。そして弾圧されるのではないかと不安がるでしょう。
(目を見張る首陽大君。)
端宗:安平大君を生かしたのは賢明なご判断です。私も叔父殺しの汚名を着せられずに済む。
首陽:ありがたきお言葉でございます。
(オム・ジャチは感激に目を潤ませている。)
「王と妃」第33話より
(キム・ジョンソは瀕死の重症から目覚める。)
キム・ジョンソ:殿下に会わねば。お会いせねばならぬ。
(キムの息子が制止しようとする。)
キム:手を放せ。
(キムは泣き崩れる。)
キム:殿下。殿下。私が、老いぼれて判断を誤ったのです。先に首陽大君を殺し、安平大君を殺すべきでした。その後殿下が成人なさり自ら政務を執れば、大君たちが王位を狙うこともなかったのに。殿下。私があまりに愚かでございました。
キムの息子:父上。
キム:殿下。まだ遅くありません。私が宮殿へ行き、殿下をお守りします。

(引用メモ)韓国ドラマ「王と妃」より(2014年3月22日)

「『王と妃』四巡目。癸酉靖難前夜。」

「王と妃」第27話より

イ・ヒョルロ:風水というものは天と地が調和をなすことも大切ですが、何より重要なのは人性です。
安平大君:何が言いたい。
イ・ヒョルロ:大君様。大君様は水のような気質をお持ちです。水は森を育みますが、自ら何も作り出しません。
(中略)
イ・ヒョルロ:君主が寛容さを示せば、臣下は陰で君主の軟弱さを嘲笑うもの。己の不正が罰されずに済むからです。過ちを犯した者が許しや情けを請う時にこそ、寛容さが意味を持つのです。ですが大君様は、最初から寛容を示そうとなさっている。これでは計画を成功させても、君主の座を守るこてはできません。首陽大君を始末し目的を成就した暁には、キムも殺さねばなりません。そうすれば誰もが大君様にひれ伏すでしょう。

「王と妃」第27話より

ハン・ミョンフェ:どんな手を使ってでも殿下に謁見し、イを地方へ飛ばすべきです。
首陽大君:謁見する方法がない。
クォン・ラム:手遅れでは?イがいないからと計画を中止はせぬはず。
ハン:二つの利点があります。大君様がイ・ヒョルロを地方へ飛ばそうとすれば、彼らは計画が気づかれていないと思い安心するはずです。またイ・ヒョルロがいなければ、安平大君はまったく動けぬはずです。ですから挙兵するには、イ・ヒョルロの排除が先決です。
クォン:安平大君より先に挙兵するのか?
ハン:その方法しかない。
クォン:挙兵するにも人がいないではないか。
ハン:かえってその方がいい。大君様。彼らはこう考えているでしょう。もし計画に気づかれたとしても、大君様は何もできぬはずだと。それゆえ、これ見よがしに武器を城内に運んだり武渓精舎で昼間から私兵を訓練させているのです。また殿下は寧陽尉宅におられるので、謀反が起きたとしても知る術がありません。
クォン:だが挙兵するにも少なくとも数十人は必要だ。
ハン:大君様がある人物さえ始末すれば成功します。
首陽:キム・ジョンソのことか?
ハン:左様でございます。
首陽:・・・
ハン:どうなさいますか?
首陽:ならば始末せねばな。
クォン:無謀でございます。
首陽:他に方法がない。
クォン:殿下に申し上げ・・・
ハン:何を言うのだ。そうすれば真っ先に殿下が殺されるぞ。
クォン:・・・
ハン:配下に信頼できる剛の者がおります。10月10日(安平の挙兵予定は10月15日)に兵を挙げましょう。それまでは絶対秘密に。そして当日人を集めるのです。大君様が説得なされば、きっと多くの者が大君様に従うはずです。ただ一つ気懸かりなことがあります。私のこの計画はお粗末なものでございます。まかり間違えば大君様は命を落としかねません。
首陽:ミョンフェ。私は死など恐れておらぬ。安平は殿下を殺害し、王位を奪おうとしているのだ。殿下を守れぬのなら、死を以て償うしかない。
ハン:面目ありません、大君様。
首陽:涙もろいのは私だけかと思ったが、いつも冷静なそなたも涙を流すのか?

「王と妃」第29話より

オム・ジャチ:同副承旨様ですね。
(シン・スクチュ、やや驚いた顔で声の主を見る。)
オム:大殿内官のオム・ジャチです。
シン:殿下の笑い声に気をとられていた。
オム:首陽大君はお元気ですか?
(スクチュの足が止まる。)
オム:首陽大君は思惑がおありの様子ゆえ申し上げます。
シン:(振り返って)何か勘違いしている。
オム:宮殿の外は制圧したとしても、宮中はどうなさるのです。
シン:何の話だね?
オム:ここには数十人を越える内人がいますが、皆異なる主人に仕えており、殿下を守れる者は少数です。
シン:そなたは誤解している。
オム:私が殿下をお守りします。
(スクチュは真顔になる。)
オム:大君にお伝えください。私が殿下をお守りするゆえ、事が成功しても私を殺さないでくれと。
(キム・ヨン登場。オム・ジャチはシン・スクチュに顔を近づける。)
オム:(小声で)頼みましたぞ。

「王と妃」第29話より

(真夜中の書斎。月の光が差す。首陽は思いに耽っている。)
イム・ウン(執事):ハン・ミョンフェ様がお見えです。
(首陽は黙っている。)
イム:大君様。
首陽:通せ。
(書斎に入るハン・ミョンフェ。蝋燭が一本灯っている。)
ハン:今日は10月9日です。ご存知ですね。
首陽:座りなさい。
(ハンは座り、首陽の目を見る。)
首陽:なぜ今まで来なかった。
ハン:書き物をしておりました。
(首陽は予期していたようにハンを睨む。)
ハン:文臣の端くれですが、久しぶりに筆を持ちました。
(ハンは懐から帳を取り出し、首陽の文机に置く。表紙には「生殺簿」とある。首陽は黙って表紙を凝視している。)
ハン:心身を清めてから、精神を集中して書きました。
(首陽は表紙をめくる。「キム・ジョンソ」と書かれている。ハン・ミョンフェは目を閉じる。もう一枚めくる。「ファンボ・イン」と書いてある。)
首陽:一人で十分ではないか。ファンボは・・・
ハン:殺すのです。
首陽:日和見なだけで・・・
(ハンは目を開いて言う。)
ハン:彼は領議政です。国政の最高責任者です。ファンボを殺さねば挙兵の名分が立ちません。
(再び目を閉じるハン。首陽はもう一枚めくる。「安平大君」と書かれてあるのを見て、怒ったように生殺簿を閉じる。ハンは目を閉じたまま話す。)
ハン:殺さねばなりません。
首陽:彼を殺す必要はない。
(ハンは目を開く。)
首陽:私に従え。
ハン:イ・ヒョルロが都落ちする前に生殺簿を書いたなら、大君様の名前が筆頭でしょう。そして二番目がキム・ジョンソのはずです。
(首陽の顔には依然として怒気が籠もっている。)
ハン:大義のために殺すのです。大君様は大義のために挙兵を望んでおられるのでは?

「王と妃」第30話より

(生殺簿が開かれている。首陽大君は「安平大君」の文字を凝視している。)
ハン:殺さねばなりません。
(首陽大君の顔は怒気に満ちている。)
ハン:安平大君を殺す理由は五つ以上挙げられます。謀反を企てたこと。大君様を殺そうとしたこと。人の道理に背いたこと。派閥を作り国政を乱したこと。不正腐敗の根源であること。
首陽:(怒りが噴き出たように)ミョンフェ。安平を殺す理由が五つ以上ならば、殺してはならぬ理由は百以上もある。
ハン:大君様。
首陽:これは認められぬ。
(沈黙)
首陽:次をめくってくれ。
ハン:一つだけお聞きします。
首陽:(やや冷静になって)言ってみよ。
ハン:安平大君を殺せぬのは、情ですか。体面ですか。
首陽:・・・
ハン:兄弟の情でためらうのなら、一人の人間としては成功なさっても統治者にはなれぬでしょう。権力と人情は火と水のようなものです。権力者が情けをかけると法と正義は乱れます。情け深い者が権力を握ると腐敗がはびこります。それゆえ諸葛孔明は息子同然の馬謖を斬り、軍紀を正したのです。もし大君様が体面を重んじ弟君を殺さぬのなら、かえって己の顔をつぶすことになります。キムとファンボを殺し安平大君を生かせば、国家百年の大計よりも王室の体面を優先したと人々に言われるでしょう。
(首陽大君は少し落ち着く。)
ハン:大君様は一身の栄華のために挙兵なさるのですか?挙兵を決心なさったのは、奸臣と逆臣どもをすべて排除し強固な国を築き上げるためでは?
首陽:(話を遮るように)次をめくってくれ。
ハン:大君様。
首陽:太宗は王位に就くため多くの血を流した。兄弟や忠誠を捧げていた側近までを殺し、その血が川となるほどだった。その傷跡がまだ残っているのだ。
(ミョンフェは無言で応える。)
首陽:私が王室の威厳を立て直す理由が分かるか。民を権力争いの巻き添えにしたくないからだ。わが国では建国後権力争いが三十年も続いた。その間の民の苦しみが分かるか。父の世宗大王には一日も気の休まる日がなかった。いかに民を幸せにするか常に悩んでおられた。その苦労の末泰平の世を築いたのに今その土台が崩れているのだ。
(ミョンフェは首陽大君の目を見る。)
首陽:キム・ジョンソを忠臣と呼ぶ者もいる。王子たちの権力争いから幼少の殿下を守る姿は忠臣と呼ぶにふさわしいが、一方で国事を掌握し権力を乱用している。キムを一面的に見てはならぬ。彼こそ権力の化身だ。私はキムにその責任を問うているのだ。一方で私が兄弟に手をかけるのなら、安平一人だけで済むはずがない。太宗がそうしたように、兄弟を皆殺すことになりかねぬ。次をめくるのだ。
(「ミン・シン」と書いてある。)
首陽:次を。
(「イ・ヒョルロ」)
首陽:友を殺すのか?
ハン:イ・ヒョルロは、殺されても私を恨まぬはずです。
首陽:どうしてだ。
(ハンは不敵に笑う。)
首陽:次をめくれ。
(「チョ・グックァン」。続いて「イ・ミョンミン」。)
首陽:閉じてくれ。
ハン:大君様。
首陽:何度考えても殺すのはキム一人で十分だ。
ハン:大君様は、兵を挙げる前から寛容を示すおつもりですか?
(ハンは生殺簿を一枚一枚めくり続ける。)
ナレーション:生殺簿。燃藜室記述によるとハン・ミョンフェが作成し首陽大君に見せたという。ハンの手に権力者たちの生死がかかっていたのだ。

「王と妃」第30話より

(ミョンフェは生殺簿を焼いている。)
クォン:ミョンフェ。
ハン:来たのか。
クォン:キム・ジョンソも殺すのか?
(ミョンフェは無言で応える。)
クォン:彼を殺すと民に支持されぬぞ。
(ミョンフェは火を見つめている。)
クォン:一体どれだけの人を殺すつもりだ。
ハン:大君様の妨げとなる者は皆始末せねばな。
(クォン・ラムは絶句する。)
ハン:“人面獣心”という言葉がある。私は人の面をした獣の心で、朝を迎えるつもりだ。
(クォン・ラムは首陽大君の部屋に向かう。)

「王と妃」第30話より

クォン:人を殺さずとも挙兵は成功するでしょう。
(首陽大君はクォン・ラムと目を合わせられずにいる。)
クォン:殿下に彼らの謀反を告げ、捕らえればいいのです。
(首陽大君は顔をそむける。)
クォン:教えてください。大君様もミョンフェと同じ考えですか?
首陽:(ようやく顔を見据えて)そうだ。
クォン:血は血を呼ぶものです。仮に挙兵が成功しても、大君様は一生罪悪感に苦しむでしょう。
首陽:殺さずに済む方法を考えなかったわけではない。殺さなくとも罪に問うことはできる。だが考えてみろ。挙兵をするにしても、私に従っている者は僅かしかおらぬ。これではまるで、崖にぶら下がる者が命綱を持つ者に戦いを挑むも同然だ。
(クォン・ラムは唇を噛んでいる。)
首陽:すでに死は覚悟の上だ。
クォン:もしも、キム・ジョンソが大君様に従ったら?
(首陽大君は無言で応える。)
クォン:キム・ジョンソが大君様と手を組むと言ったら、彼を生かしますか?
首陽:キム・ジョンソは、誰よりも私の死を望んでいるはずだ。
クォン:ですから私が左議政(キム・ジョンソ)に会って、大君様に従う意向があるか確かめます。
(首陽大君はクォン・ラムの目を見ている。)
クォン:それが忠臣を殺す際の筋かと。

「王と妃」第30話より

イ・ヒョルロ:(月に語りかけるように)ミョンフェよ。私たちのどちらかは、必ず殺されるだろう。それを考えると眠れぬ。お前が死ねばお前のために泣いてやる。私が死んだら、私のために泣いてくれ。

(引用メモ)韓国ドラマ「王と妃」より(2014年3月9日)

「王と妃。四巡目。セル版は販売されていないので、興味のある方はレンタルで見て頂きたい。」

「王と妃」第23話より

首陽大君:ご苦労だった。
イ・サチョル(右参賛):とんでもない。
首陽:スクチュも飲め。
シン・スクチュ:私が先にお注ぎします。
首陽:私は今夜は飲まないつもりだ。
シン:大君が酒を拒むとは。
首陽:・・・
シン:空の杯のまま夜を明かす気ですか?
首陽:私にはこれが酒ではなく、殿下の涙に見えるのだ。
シンとイ:・・・
首陽:寝ても覚めても思うことは一つ。いかにして殿下を強い君主にするかということだ。私が急に死んだりしたら、幼い殿下は誰を頼ればいい。それを思うと心配でならんのだ。
イ:大君が生きている限り、誰も王座を狙いはしません。
首陽:殿下が大人になられるのはまだ何年も先のこと。だが宮殿の状況を見てみよ。議政府の老いた官僚たちが政治を行っている。宮中は恵嬪が牛耳り、内官たちは様々な主人に仕え保身に必死な状況だ。宮殿を護衛すべき禁軍は工夫になり下がっている。そればかりか国政の不備を指摘する臺諫の発言権が守られておらず、集賢殿の学士らも頼りにならない。どこも問題だらけだ。これでは殿下の未来はどうなる。
シンとイ:・・・
首陽:私に力があれば世を変えたい。枯れゆく木を救うため枝を切るごとく、不要なものは切り捨て世を正す。だが私にそんな力はない。だから私の目には殿下に賜ったこの酒が、殿下の涙にしか見えんのだ。
(別シーン挿入あり)
(イ・サチョル、酔って退席)
シン:大君に随行する間、一つの疑問が頭から離れませんでした。
首陽:言ってみよ。
シン:大君は純粋に殿下の身だけを案じているのですか?
首陽:・・・
シン:何か野望を抱いているのでは?
首陽:私は強い王室を望んでいる。
シン:・・・
首陽:強い王室こそが国家を守れるのだ。
シン:秦の始皇帝は誰よりも強い王だったはずです。
首陽:だから天下統一という偉業を成した。
シン:秦が滅亡した原因もまた始皇帝にあったのでは?
首陽:今の中国を見よ。無数の王朝を経たが始皇帝の築いた制度は今なお引き継がれている。
シン:太宗が朝鮮王朝の基礎を築き、世宗が文治で完成させた。今も改革の対象が残っているとすれば、それは人だけです。人間の欲が災いを呼ぶのです。
首陽:それは違う。今の制度を見よ。議政府署事制などと言って議政府が政治を牛耳っている。人事も王室の財政もすべて議政府が取り仕切っている。殿下には何の決定権もない。その上臺諫の上書にまで議政府が目を通す始末だ。
シン:・・・
首陽:これではいかん。議政府署事制は廃止し、殿下に実権を返すべきだ。殿下への進言は許すが、私情による人事は禁ずる。そうすれば民も従い国が安定するだろう。
首陽:大君。実現に向けての構想は?
首陽:まずは安平を屈服させ、その後で・・・
シン:話をやめたのは、私を信用できないからですか。
首陽:スクチュは私を信じるか?
首陽:一つだけ約束してくださるなら、私は大君を信じます。
首陽:約束とは?
シン:学者の夢は理想的な国家の建設です。欲で国を建てるのではなく、朱子の理念に基づき都を築くのです。そういう君主なら学者は皆従うでしょう。
首陽:スクチュよ。私は名分を得たいがためにそなたを味方につけたいのだ。
シン:ならば、私の杯をお受けください。
(首陽大君は杯を取り、シン・スクチュの酒を受ける。)
シン:この酒が殿下の涙に見えるとおっしゃいましたね。失礼ながら私の目には民の涙に見えます。
首陽:私はそなたの言葉を肝に銘じよう。

「王と妃」第24話より

首陽大君:(安平大君への伝言)私が燕京を発つ時、そなたが義州で迎える約束になっていたが、そなたが期日を守らず遼東に長逗留させられた。また口実を作るとは、兄への情はあるのか。

「王と妃」第24話より

首陽大君:殿下から賜ったお酒だ。
(首陽は安平の杯に酒を注ぐ)
安平大君:溢れそうです。兄上。
(溢れた酒で安平の手が汚れる)
安平:なんと。
首陽:飲みなさい。
安平:・・・
首陽:その酒を殿下への涙だと思って飲め。
安平:聞き捨てなりませんな。
首陽:兄弟の間に反目があってはならぬ。
安平:・・・
首陽:我々が反目すれば誰が喜ぶと思う?
安平:・・・
首陽:キム・ジョンソとファンボ・インだろう。
安平:国を案じているのは兄上だけではありません。一人だけ殊勝なふりをしている兄上の独善が問題です。
首陽:だから謀反を企んだのか。
安平:言葉を謹んでください。
(別シーン挿入あり)
安平:兄上に味方がいますか?老いぼれの譲寧伯父上を除けば、兄上に従う人間は一握りもいません。私が兄上より有能だからではありません。兄上は皆に警戒されているのです。謀反を企むのなら、私ではなく兄上ではありませんか。
首陽:・・・
安平:私がいなければ兄上はすでに、その手を甥の血で汚していたはず。私はそれを知るゆえ兄上の独善を阻むべく、仲間を集めているのです。
(首陽、微笑む。)
安平:警告します。
首陽:・・・
安平:都に帰ったら、二度と宮殿の内外のことに干渉しないでいただきたい。私が兄上の代わりに殿下をお守りするゆえ、口を出さないでください。
首陽:(はぐらかすように)先王の一周忌後、殿下にご結婚を勧めようと思う。
安平:口出しは無用です。
首陽:喪中ゆえ好ましくはないが、世継ぎの問題は重要だ。
安平:羊頭狗肉という言葉があります。
首陽:・・・
安平:これ以上、甥をだますべきではありません。幼い甥の前で偽りの涙を流している兄上の偽善を、もう放っておきません。
首陽:先王様も晩年に世子妃を選ぼうとしていた。
安平:殿下の年齢は今年でまだ13歳です。喪も明けないのに王妃を迎えるのは非常識です。
首陽:弟よ。殿下はひどく孤独でおられる。宮殿の夜はとりわけ静かだ。宮殿の門が閉まれば、内官らに囲まれた部屋で殿下は絶海の孤島にいるような気持ちでおられるだろう。王妃を冊立しよう。幼くとも夫婦の情は理解できる年ではないか。情を分かち合える人がいれば、殿下の寂しさも紛れるだろう。
安平:・・・
首陽:王妃を冊立すれば王室の体裁も整い、殿下の威厳も高まるはずだ。そうすれば、もう誰も殿下を侮れまい。悔しくないのか。
安平:・・・
首陽:老いた大臣らが政治を独占し、殿下を手下扱いしている。何も殿下の意のままにならぬ。私はそれが悔しい。ゆえに私の目には、殿下にいただいたお酒が殿下の涙に見えるのだ。血の涙だ。これは殿下の血の涙だ。
安平:・・・
(別シーン挿入あり)
首陽:弟よ。私たちが殿下をお守りすれば、大臣も殿下を軽んじられぬ。同意してくれ。そなたと私が手を組み、殿下をお守りしよう。
安平:いいでしょう。兄上が先に事を企まぬなら、私も兄上を出し抜いたりしません。
(安平、酒を飲み干す。)
(首陽は安平を凝視している。)

「王と妃」第25話より

首陽大君:(キム・ジョンソについて)ミョンフェは何と?
クォン・ラム:どうせ越えねばならぬ山だと。
首陽:ならば越えねばな。
クォン・ラム:簡単には越えられぬ山です。
首陽:なぜキム・ジョンソは安平の動きを封じたと思う。
クォン・ラム:真意は分かりませんが、民には忠臣と呼ばれています。
首陽:私をねじ伏せれば、忠臣中の忠臣となるだろうな。
クォン・ラム:・・・
首陽:私がいなくなれば、誰が殿下を守るのだ。私と安平に力がなくなれば、朝廷はキムの独擅場となる。
クォン・ラム:・・・
首陽:歴史を見ろ。歴史を動かしたのは何か。
クォン・ラム:・・・
首陽:ひとえに力だ。歴史は力がある者の味方だ。名分や大義は常に強者の口実に使われてきた。キムとて同じだろう。
クォン・ラム:・・・
首陽:王墓が崩れた件でキムは弾劾されている。彼に野心がなければ、当然辞職し野に下るだろう。今、私はキムの真意を探っているのだ。

「王と妃」第26話より

首陽大君:お待たせして申し訳ありません。
キム・ジョンソ(左議政):構いません。
首陽:久しぶりに弓を射ていました。腕が鈍ったのか、何度も的を外しました。
キム:殿下が寧陽尉の屋敷に移られるので、お知らせに来ました。
首陽:・・・
キム:大君はイ・ヒョルロを叩かれましたね。
首陽:・・・
キム:白岳山の裏に宮殿を建てねば王の長子は栄華を極めぬと、イ・ヒョルロは言っていました。疑わしい話ですが、この際昌徳宮を補修し大殿にしようかと。
首陽:昌徳宮の修理には・・・
キム:いくら急いでも数か月はかかるでしょう。
首陽:そんなに長い間、寧陽尉の狭い家では政務を行えぬでしょう。
キム:喪中の殿下が政治に関わり過ぎることは、望ましくありません。
首陽:・・・
キム:ではこれで、おいとまします。
首陽:酒の用意をさせました。せっかくおいでになったのですから、酒の一杯も飲んでいってください。
(別シーン挿入あり)
首陽:殿下は喪中のため政治に関われず、経書の講義にもあまり出られませんでした。ですが年が明け、殿下も年齢を重ねました。これから自ら朝廷をまてめていくべき時に、寧陽尉の家に移るのは、私としては賛成できません。
(キム・ジョンソ、微笑する)
首陽:納得のいくご説明を。
キム:大君が燕京においでの間、殿下は食事が原因で何度か体調を崩されました。
首陽:・・・
キム:単なる食中毒かもしれませんが、毒を盛られたのかと疑ったこともあります。
首陽:まさかそんな。
キム:大君もお食事に気をつけろと殿下に伝えたのでは?
首陽:・・・
キム:宮殿は広大です。いくら気をつけていても、隅々まで目が行き届きません。もし誰かが殿下を毒殺しようと思ったら、不可能ではありません。
首陽:犯人に心当たりでも?
キム:・・・
首陽:確証もない話を口にして、噂になったら波紋をもたらします。もし問題が起きたら左議政の責任です。
キム:殿下には世継ぎがいない。私はそれを案じています。
首陽:・・・
キム:殿下にもしものことがあったら、王位を継ぐ人物は?
(別シーン挿入あり)
キム:誰だと思いますか。譲寧大君だとでも?
首陽:・・・
キム:もちろん首陽大君でしょう。
(別シーン挿入あり)
キム:安平大君の軽率な行いは私が阻止しました。大君は諦めぬでしょうが、私一人で十分に阻めます。
(首陽大君、微笑する。)
(別シーン挿入あり)
首陽:殿下に何かあったら、この首陽も殺されますな。
キム:・・・
首陽:そうでしょう?
キム:その通りです。朝鮮王朝が始まって六十年余りの間、王の権力は強大でした。太宗と世宗は剛健な方でしたが、先王は極めて気弱な王様でした。今の王はその方の子息です。先王は幼い息子に王位を譲るつもりなら、まず自分の兄弟の勢力をそぐべきでした。さもなくば嫡男継承を断念した方がよかった。
首陽:左議政は先王の顧命を受けましたか。
キム:・・・
首陽:私の兄は左議政に幼い王を世話するよう頼みましたか。
キム:・・・
首陽:私は王の叔父です。私を疑うことは王室への侮辱であり、殿下への侮辱だと心しておかれよ。
キム:・・・
首陽:私が野望を抱いていたら、仲間を募って私兵を集め、官僚の歓心を買っていました。
キム:・・・
首陽:しかし私は仲間を募らず、命知らずの猛者も集めず、大臣や末端の役人の機嫌も取っていません。
キム:首陽大君は・・・
首陽:・・・
キム:その存在だけで皆を引きつけています。
(キム・ジョンソ退場)
首陽:(心の声)そこまでする気か。そこまでして只で済むと思うなよ。

(引用メモ)韓国ドラマ「王と妃」より(2014年3月1日)

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「王と妃」第15話より

ハン・ミョンフェ:こういう時は崖っぷちに身を置いてこそ生きる道が見えてくるものさ。

「王と妃」第17話より

クォン・ラム:何を言う。運命には逆らえんだと?
ハン・ミョンフェ:仕方ないのさ。諸葛孔明は無能だから天下を取れなかったのか?大業を成すには天を味方にせねば。だがそういう状況ではない。
クォン:本気で言っているのか?
ハン:そなたを信じて大君を選んだのは間違いだった。
クォン:ミョンフェ!
ハン:怒りたいのは私の方だと言うのだ。
クォン:そなたが大君から、何か対策を言付かっているだろうと思った。それなのに・・・
ハン:世間の動きを分かっておらんのか?安平大君のあの勢いは誰にも止められん。四十になるこの年まで、よい時代が来るのを夢見てきたが、運のない奴は何をしても駄目なようだ。

「王と妃」第18話より

イ・ヒョルロ:領議政様は気弱で及び腰になりがちです。ですから思い通りに動くよう手綱を締めねばなりません。
安平大君:彼の力を借りずとも事は成し遂げられる。
イ:大君様。手中にあっても油断してはなりません。飼い犬に手を噛まれることもあります。領議政様が今味方だとしても、明日は首陽大君に寝返るかもしれません。定見のない人だからです。

「王と妃」第18話より

ハン・ミョンフェ:ラムではないか。
クォン・ラム:・・・
ハン:そんなに刺すような視線で見ないでくれ。
クォン:安平大君宅にいたのか?
ハン:今、何と言った?
クォン:ヒョルロの酒をもらうとは、ずいぶん情けないな。
(ミョンフェ、不敵に笑う。)
クォン:そなたのことを見損なったぞ。
ハン:安平大君は、首陽大君が戻る前に事を起こすだろう。
クォン:・・・
ハン:これを逃せば、安平大君に機会はない。イ・ヒョルロもそれを知っている。
クォン:安平大君が謀反を企てているのか?
ハン:高麗の君主の中で、何人が毒殺されたと思う?
クォン:・・・
ハン:私が安平大君なら、そうするだろう。

「王と妃」第19話より

譲寧大君:外にいる荒くれ者は何のために集めた?
安平大君:せっかちですね。先に私から拝礼を。
譲寧:そんなものは無用だ。
安平:それでは後で拝礼します。
譲寧:早く答えなさい。
安平:荒くれ者という言葉は人聞きが悪いですな。
譲寧:皆、腕に覚えがありそうだが?
安平:そうお考えなら言い訳はしません。
譲寧:それは時間が省けてありがたい。つまり、そなたが事を起こすという世間の噂は本当なのだな?
安平:世間ではそう噂されていますか。
譲寧:一体、何人殺せば成し遂げられると思う?答えなさい。
安平:人を殺生せねば成功しないと言うのですか。
譲寧:私を殺さねばやり遂げられぬぞ。
安平:伯父上を殺すことなど考えていません。
譲寧:殺す度胸もなく何ができる?太宗は兄弟を何人も殺めた。それでもやるか?
安平:なぜ伯父上は兄上の肩ばかり持つのですか。
譲寧:分かり切ったことだ。そなたの器が首陽に及ばぬからだ。
安平:王位に欲はありません。しかし兄上が政権を握れば兄弟を殺すはず。兄上なら十分にあり得ます。
譲寧:だから先手を打つと言うのか。馬鹿を言うな。
安平:企てなどしていません。
譲寧:今までの話は冗談か?
安平:初めから私を疑っておられた。
譲寧:無欲の人間が荒くれ者を集めるか?
(安平大君は答えず)
譲寧:くどくどとは言わぬ。根性があるならやれ。私を殺せる度胸があるならやってみろ。

「王と妃」第20話より

譲寧大君:安平大君には人を集める才能はあっても、人を殺す度胸はない。

「王と妃」第20話より

イ・ヒョルロ:陰謀というのは単純なほどよいのです。大君様は方策を考えろとおっしゃいましたが、実に単純なことでございます。これという日を決めてから彼らを討てばいいのです。
安平大君:それだけか?
イ:大君様は目的を果たすことだけをお考えください。戦場の兵士が敵に剣を突きつけて何を思うでしょう。余計な考えを巡らしてしまうと、ためらった挙句好機を逃してしまいます。“武渓精舎”というものを建てましたが、あれは男たちを集めて食わせてやるためではなく陰謀を企てるために建てたのです。ですからどんな口実を作ってでも右議政様と王族たちをそこへ集めてみせます。そして大君様が彼らを殺せば、大君様の望みが叶うことでしょう。

「王と妃」第20話より

イ・ヒョルロ:どうだ、ミョンフェ。清らかな水が足の指を流れてゆく感覚は。
ハン・ミョンフェ:いい気持ちだ。
イ:こそばゆくて気持ちがよいであろう。
ハン:ずっとこうしていたいものだ。
イ:私は気分の滅入っている時には、川辺に座り足を水に浸けながら物思いにふけるのさ。男に生まれたからには、この世にイ・ヒョルロという者がいたという証拠を残したい。だが、そう簡単にできることではない。
ハン:その通り。
イ:こうして川に足を浸けていると、足がこそばゆくて笑みがこぼれるだろ?自然と笑顔になれるのだ。金のある奴。官職に就いたからと威張り散らす奴。偉そうにしている両班たち。力自慢をする奴。王の正室の子だからと傲慢極まりない奴。そういう奴らがこの川の水のように私の足の指をくすぐりながら、自分は偉いと威張っている。憎たらしい奴らめ。私の足の指の垢にも劣る連中めが。
ハン:なあ、ヒョルロよ。お前は主のお陰で前途洋々だというのに、なぜそんなに世間に不満を抱いているのだ。
イ:首陽大君に背を向けてしまったのか?
ハン:私は主を選び間違えたのだよ。
イ:私と行動をともにしよう。安平大君は大器とは言えんが、そなたも私も後世に名を残すことはできるだろう。
ハン:安平大君は駄目だ。
イ:何故だ。
ハン:首陽大君がいない今行動を起こすべきだろうが。
イ:まあ、見ていろ。首陽大君は都の中に足を踏み入れることはできんだろう。愉快だ。ああ、なんていい気分だろう。

「王と妃」第21話より

イ・ヒョルロ:ミョンフェ。一体何をしている。
ハン・ミョンフェ:咳払いもせずいきなり入ってくるな。
イ:大君様にどう言おうか練習していたのか。
ハン:そんなことは気づかぬふりをするものだ。
イ:恥じる必要などない。我々のような策士には主が必要だ。
ハン:私は大きな過ちをした。安平大君を見損なっていた私を受け入れてくれるだろうか。
イ:大君様はそんなに心の狭い方ではない。
ハン:ヒョルロ。大君にうまく話をつけてくれ。
イ:そういえば、大君様は宮殿を出てから別のところに行ったらしい。会うのは今度にしろ。
ハン:何だと。心が狭いのはお前の方だ。私に会わせぬため別の場所に行かせたな?
イ:そんなわけがない。お前を必要としているのは私だ。お前が首陽大君の家に行ったと聞き、どれほど気をもんだか。首陽大君は恐ろしくないが、お前は怖い。
ハン:私を認めてくれているなら、どうかうまく頼んでくれ。本当に後悔しているのだ。
イ:事を成し遂げるには、どうすべきだ?
ハン:どういう意味だ。
イ:誰を殺せば事が成功するかと尋ねた。
ハン:それは・・・
イ:首陽大君は?
ハン:殺すべきだな。
イ:キム・ジョンソは?
ハン:殺すべきだ。
イ:ファンボ・インは?
ハン:あの老人は殺すまでもない。
イ:二人だけでいいのか。
ハン:十分だ。
イ:それは違う。
ハン:もっと殺すのか。
イ:首陽大君は殺さん。
ハン:何を言う。首陽大君がいる限り・・・
イ:キムがいなければ首陽大君は何の力も発揮できん。
ハン:そうか?
イ:殺すなら、キム・ジョンソとファンボ・インだ。他にも何人かいるがな。
ハン:私の考えは浅いようだ。
(ヒョルロ、安平大君の椅子に座り物思いに耽る)
ハン:おい。
イ:私がこの席の主ならば、することはただ一つ。王を殺す。
ハン:おい、ヒョルロ。何を言うのだ。
イ:だが、安平大君にはお出来にならんだろう。大君は誰かを殺せるようなお人ではない。
ハン:意味が分からん。
イ:首陽大君はお前に何と言って燕京に発った?安平大君は何もできぬとおっしゃっただろう。
ハン:そう言われたならここに来ない。
イ:ミョンフェ。私たちはお互いのことを知り尽くしている。お前は一度仕えた主に背を向ける人間ではない。
ハン:背きたくはないが、死ぬと知りながら仕え続ける人間でもない。
イ:本当に松都に戻って敬徳宮の番人をする気か。
ハン:・・・
イ:私が心を見通した以上、嘘をつくお前ではない。
ハン:ヒョルロ。もどかしい男だな。お前は私より才能がある。それなのになぜ世情を正しく読み取れぬのだ。安平大君が兄に勝てぬのはよく知っているだろう。何より安平大君には政権を握る資格がない。
イ:首陽大君には資格があるのか?
ハン:あるとも。王となる器をお持ちだ。それが第一の資格。狡猾で欲深い者は遠ざける方だ。それが第二の資格。殿下が慕っておられる。それが第三の資格だ。民の心も掴んでいる。
イ:もう帰れ。私たちは進むべき道が違う。
ハン:今、首陽大君はあまりにも孤独だ。鴨緑江を渡って戻ってくるのは容易ではない。それは分かっている。だが私には助ける力などない。首陽大君が燕京に行く時、何とおっしゃったか知りたいか。策はないと。だが、肝に命じておけ。時には斬られた人間が勝つこともある。今血を流して立っている首陽大君の姿をよく覚えておけ。

「王と妃」第22話より 安平大君:どこへ行くのだ。

イ・ヒョルロ:大君様のお考えはよく分かりました。今から各方向に人を遣わし、計画を取り止めます。
安平:取り止めるとは言っておらぬ。
イ:殺さずに済む方法はないのです。取り止めるしかありません。
安平:大勢は我々に有利だ。譲寧大君以外は私を支持している。議政府は私の言いなりだ。恵嬪や内官も私の味方だ。兵曹に影響力を持つミン・シンもな。それで十分ではないか。
イ:大君様。大君様は権力の本質がまだ分からぬのですか。首陽大君が事を起こした際には、キム・ジョンソと大君様を殺すでしょう。キムが逆心を抱いた場合、首陽大君と大君様を殺すはずです。権力は分かち合うことができぬもの。だからこそそれを独り占めするため、殺し合いが生ずるのです。権力は二つに分けることも分かち合うこともできません。

「王と妃」第22話より

安平大君:こんな馬鹿なことがあるか。キムと首陽大君側の人間ばかりだ。領議政はこれをみすみす見過ごしたのか。

「王と妃」第22話より

(高笑いのミョンフェ)
ハン夫人ミン氏:どうなさったのです。気でも触れたと思われますわ。
ハン・ミョンフェ:気が触れそうなのは安平大君だろうよ。
ミン氏:どうしてですか。
ハン:なんという小心者だ。ああも度胸がないとはな。しょせん遊び人に天下を取れるわけがない。イ・ヒョルロよ。私より聡明だったお前が、仕える主人を誤るとはな。

「王と妃」第22話より

ナレーション:首陽大君が目の前にいる時は反対勢力の結束はおのずと固まっていた。だが彼が誥命謝恩使として明へ行っている間、反対勢力は四部五裂し対立し合っていた。首陽大君の読みが的中したのである。

「王と妃」第19話より

首陽大君の詩
(端宗即位年10月21日)

旅行けば歳月の流れ遅く
尽きぬ情 よみがえること夢の如し
国の礎 強固ならずとも
わが兄弟は難事に挑む
中国への旅の折々に
私の様子を伝えたい
社稷を守る遠大な計画を立て
この命を捧げ国の危機を救わん
振り返れば故郷の山河は遠く
カッコウが桑の上を飛ぶのみ
欲するは国に忠をなすことのみ
さればしばしの別れ 案ずるにあたわず
御身の安否を伝え聞き
詩を一首 送らんとす
この命続けば
心中に募る思い いずれ語り合わん

(引用メモ)韓国時代劇「王と妃」他より(2014年2月8日)

「『王と妃』はこれで四巡目になる。最初はBS日テレで二巡して(11年・12年)、次はサンテレビ(13年)。今年はDVDを買った。韓流ドラマの中ではマイナーな作品になるが、脚本が深いから飽きないのだ。」
「本作品には韓流ドラマの特徴であるファンタジー要素は微塵も存在しない。朝鮮王朝実録をほぼ唯一の典拠とし、そこに脚本家チョン・ハヨン氏の深い洞察が加えられている。」
「作品自体は大河ドラマを銘打ってはいるが、低予算で作られたであろうという感じが漂っている。しかしそれが却って脚本の力を浮かび上がらせているのだ。カネをかけなくてもいいドラマは作れるという見本だ。」

「王と妃」第11話より

キム・ジョンソ:首陽大君はそこまで軽はずみな人間ではない。慎重な人間が軽率な真似をしたのだ。安易に判断できる一件ではないだろう。
愛妾:いくら大魚でも、水を得られねば大海原にたどり着けません。

「王と妃」第11話より

ハン・ミョンフェ:イ・ヒョルロの画策にそなたの主人がはめられて心配なのだろう。だがそれは取り越し苦労だ。首陽大君という方は、野心に溢れているからな。
クォン・ラム:それは勘違いだ。首陽大君は・・・
ハン:世宗に続いて先王の時代でも王の補欠だった。補欠という立場は針のむしろだ。利口に見えすぎれば抹殺される。愚かすぎれば、ないがしろにされてろくな扱いも受けない。そして、首陽大君はその地位を三十年近く守ってこられた。それが今はどんな立場だと思う?進むに進めず後ろにも引けない。抜き差しならぬ立場におられるのだ。
クォン:ではなぜイ・ヒョルロの企みに応じた?
ハン:二つの思惑があったはずだ。イをこらしめれば、自分の存在を世間に誇示できる。そして朝廷でこの件を論争させ分裂させることもできる。キム・ジョンソは和解を求めた。大君は断る名分がなかった。だからキムと手を組んだ。だが任せてもらえたのは先王の墓作りくらいだ。今世間は首陽大君の話題でもちきりだ。死んだ人間が立ち上がったように、首陽大君はよみがえったのだ。これは魚が水を得たようなものだ。

「王と妃」第8話より

桃源君夫人ハン氏:女の一生は夫次第だと教わりました。女は水と同じです。入る器によって形が変わる。夫という器がなければ土に染み込んでしまったり、川の水となって流れてしまうのです。私は、陰となり日向となり、夫を支えなさいと。悔しい思いをしても耐えなさいと。そしてどんな時も夫に尽くせと教わりました。
桃源君:何が言いたいのだ。
ハン氏:ご自分の人生をどう送ろうとお考えですか?王族ともなれば食べ物や着る物や住むところの心配は必要ないのでしょう。
桃源君:よい人生ではないか。
ハン氏:それでは動物と同じです。
桃源君:何を言いだすのだ。
ハン氏:人は生まれていずれは死ぬもの。だから人生は大切です。平凡な人生で満足なさる気ですか?
桃源君:そなたは分かっていない。王族は官職には就けないし、なまじ聡明だと周りにつぶされる。だから身をかがめて生きるのだ。
ハン氏:“雨垂れ石を穿つ”と言います。強い意志さえあれば、望みは叶えられるのです。弱気になってはいけません。お義父様は天下の首陽大君ではありませんか。皆お義父様を王の器だと言います。王になる資質が十分おありになると。
桃源君:言葉を慎むのだ。
ハン氏:つまりあなたも王になる可能性が――
桃源君:夫人!
ハン氏:好機が訪れなくとも大志は抱くべきです。それが実現しなくともいい。器の大きな人間になるには大志を抱いていなくては。

「王と妃」第8話より

恵嬪ヤン氏:本心ではどうか分からないわ。うわべだけの敬意でしょう。だけど構わないわ。私に屈したのだからそれでいい。
オム・ジャチ:その通りです。臣下は心から屈したりはしないものです。表面だけでも相手が屈すればそれが権力。これで恵嬪様も権力を手にしました。

「王と妃」第8話より

ナレーション:宦官オム・ジャチ。宦官の頂点を極め文宗の寵愛を受けた。のちに首陽大君に仕え政権奪取を助けたが、結局は首陽大君の暗殺を企てた。彼をどう見るべきだろうか。

韓国時代劇「トンイ」より

チャン・オクチョン:正直者の成功は難しいが、正直を装う者の成功は早い。

韓国時代劇「テジョヨン」より

イ・ヘゴ:興奮すると隙がでる。そなたは自分自身にも勝てておらん。

「王と妃」第5話より

ナレーション:安平大君については説明が難しい。彼は相反する二つの評価を受けた人物だった。安平大君は非常に政治的で野心家だったと言う者もいた。だが逆に、穏やかで人間的だったという声も同じように聞かれていた。恐らく安平大君のこのような両面性が野心家たちを引きつけたのだろう。だが、その両面性によりしばしば決断力を欠き、自らを破滅の道へと導いたのだった。

「王と妃」第6話より

イ・ヒョルロ:なぜ集賢殿に人がいないのだ?
シン・スクチュ:世間が騒がしいからだ。
イ:こんな時こそ精進するのが学者の務めではないのか。

「王と妃」第6話より

首陽大君:太宗がチョン・ドジョンを殺したのは国のためを思ってです。王権を欲したからではありません。チョン・ドジョンの唱えた臣権主義とは君主の横暴と権力の集中を防ぐこと。しかし同時に支配階級を増やすものです。現実をご覧ください。役人は禄とともに田畑をもらいます。その地は代々受け継がれるゆえ、役人に与える田畑はいつか底をつきます。民の耕作地がありません。しかも税と労役の二重負担で民の苦労は並大抵ではありません。民を楽にするには王室を強くしなければ。王室が弱いと官僚が増長します。高麗が滅んだ原因もそこにあります。王室は民と向き合うべきです。国の力はそこから生まれます。

「王と妃」第6話より

シン・スクチュ:弱者が正義を訴えても強者が得するだけだ。貫き通せない正義には価値がない。改革を起こすのは政治家だが、改革の火をともすのは学者達の胸にある怒りだ。ゆえに世宗大王は、混迷期にも揺れぬ道標になれとおっしゃったのだ。
イ・ヒョルロ:そなたが世間から優柔不断だと言われる理由が分かった。政治家が真剣に改革するか?改革なんぞは自分の欲を隠すための偽善だ。なぜ奴らが世の中を変える?利益を得たいからだ。

「王と妃」第12話より

首陽大君:私はクォン・ラムに、どうすべきか尋ねたことがある。クォン・ラムはこう答えた。もっと下手に出よと。私はどうすればよい?
ハン・ミョンフェ:寺の中で殺生を論ぜよとおっしゃるのですか。
首陽:今、何と?
ハン:寺の中で殺生を論じさせるつもりかと申し上げたのでございます。
首陽:南無観世音菩薩。
ハン:権力は強者のものです。弱者が権力を握ると、大勢が血を流します。力のある者が権力を握ってこそ、殺生を避けられるのです。
まずキム・ジョンソについてです。キムは公平無私な人で信義を何よりも重んじます。一度信頼すれば疑わず、一度決めた道は突き進みます。それゆえ世宗大王はキム・ジョンソを信頼し、病弱だった先王様を補佐させたのです。一方、権力者というものは、信義より裏切りを、信頼より利益を優先し、行き詰まれば逃げ道を探すのが常です。それゆえキムは乱世の英傑とはなれません。自らは何もできぬ男です。忠臣として後世に称えられはしても、謀反は企てぬでしょう。
次に安平大君ですが、世間では安平大君のことを当代一の風流人と呼んでおります。風流とは酸いも甘いも噛み分けた者が人生のむなしさを悟り、解脱の境地に達して初めて会得できる精神世界なのです。遊びと風流とは異なります。詩歌をたしなむだけでは風流とは言えません。まして通を気取り道楽にふける者を当代一の風流人と言えましょうか。舌を肥やし、木綿や麻の着物よりなめらかでつややかな絹の着物を好む、苦労を避け楽しみを追求する。そのような者に乱世は救えません。
最後に大君様です。大君様は時機をわきまえておられます。好機には自ら道を開きます。また事を急がぬゆえ、行き詰まった時は休むでしょう。そして堪え忍ぶことをご存じゆえ、気が熟さぬ限り前に進まぬはず。人によってはこう見るでしょう。大君様が剣の刃先を握りキムが柄の部分を握っていると。ですが刃先を握っているのはキムの方です。
首陽:クォン・ラムはこうも言った。天下を取りたければ次の二つを手に入れろと。一つは名分であり、もう一つは天の与える好機だ。私はその二つを手に入れられるか?
ハン:名分は作れますが、天の意は人力の及ばぬもの。ですが私の力さえあれば大君様は好機を掴めます。
首陽:それでは私の参謀になってくれぬか。
ハン:項羽は秦を滅ぼし、秦の兵数十万を生き埋めにしました。一方劉邦が殺したのは建国功臣のみ。殺した人数を比べると項羽の方がはるかに多い。ですが、名もなき数十万の兵の命と建国功臣の命とではその重みが違います。大君様は劉邦にはなりませんね?
首陽:謀反を企てる者やその一味に力を貸さぬ限り、そなたと私は運命をともにするのだ。

「王と妃」第12話より

首陽大君:イ・ヒョルロは奸悪で無礼な者ですが、個人的な感情で彼を罰したのではありません。かつてイは汚職を働き、風水と称し巧みな言葉で民心を惑わしました。そこで集賢殿の学士らが彼を糾弾し死刑に処しようとしたのですが、赦免されたのです。ところが近頃、“宮殿を白岳山の前に建立したせいで長男は衰え、次男以下が栄える。次男以下の太宗と世宗が王になり、先王様は長男ゆえ早世した”と言ったため、私がそれを罰したのです。殿下。聞けば安平の誕生日の席にキム・ヨンら内官数人が出席したそうです。また三十人余りの官僚も出席していて、イが束ね役だったとか。殿下に仕える内官が王族の一人と懇意にしたり、官僚が王族の家を訪ねるなど言語道断。さらに彼らを安平の誕生日に呼んだのはイ・ヒョルロだったのです。
殿下。謹んで申し上げます。イ・ヒョルロを罰したのは、あの者が安平の家に出入りし王室の和を乱したためです。また安平がイの口車に乗せられ、愚かな真似をせぬか憂慮したためです。イは国の役人ではありますが、実際は安平の家僕です。ですが殿下、私は殿下のご許可も得ず殿下の臣下を鞭打ちました。これは許されざる罪です。どうか私を罰してください。

「王と妃」第12話より 首陽大君:殿下の代わりに私が悪役になったのです。

シン・スクチュ:どういう意味ですか?
首陽:朝鮮が建国されてたかだか六十年余りです。すべてにおいて磐石とは言えません。世宗は嫡男継承の原則を立てられました。隙あらば手段を選ばず王座を狙う者たちを警戒するためです。私には兄弟が五人もいます。皆、心の中では一度くらい王座に着く己の姿を想像したことがあるはずです。現に私もそうでした。兄上が床に伏しておられると、もしや世子の座が私に回ってくるのではと妄想したものです。今もそうです。まだ殿下は幼少です。将来、自ら国政を執り行うようになるまでに、誰かがゆゆしき事態を起こしたら?
シン:それは大君様の取り越し苦労です。
首陽:いいえ、心配してもし過ぎることはないと思います。宮殿に来る度に私は康寧殿を見上げます。知らぬうちに権力欲が頭をもたげるのです。王になれるのなら・・・
シン:大君!
首陽:その度に、父上や兄上が思い浮かびます。幼い甥のことも浮かびます。イ・ヒョルロは安平の欲望を焚き付けています。私があの者を鞭打ったのは、安平に警告するためだったのです。